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3月24日は世界保健機関(WHO)が定めた「世界結核デー」


 1882年3月24日はドイツの細菌学者であるロベルト・コッホが結核菌発見を発表した日であります。130年経た
現在も、世界で約20億人の感染者が存在し、毎年900万人以上の新規感染患者が発生、300万人の命が奪われて
います。エイズやマラリアとともに世界的にも最大級の感染症であり続けています。
 WHOは1990年代後半からDOTS戦略を推進しはじめ、1993年には結核緊急事態宣言を発令し、1997年に
3月24日を世界結核デーと定め先進国,途上国の世界のすべての国と地域が結核問題に関心を高め、力を
あわせて解決を図る戦略を展開するようになっています。わが国は先進諸国の中では結核罹患率が高い国とされて
いますが、結核対策の手段がそろいはじめた1970年代から結核に対する関心が急速に低下してきました。
その結果、1998年に患者数の増加がみられるようになり、1999年に厚生省、日本医師会、結核予防会が連名で
「結核緊急事態宣言」が発令されています。しかし、わが国は現在、2000年に沖縄で開催された沖縄サミットを期に、
世界の感染症対策に対して各国が協力して取り組むことをサミットの議長国として、G8諸国とともに、インドネシア、
タイ、ブラジル、ザンビア、ケニアなど10 カ国を加え、国連エイズ計画、WHO と国際機関、NGO も参加した中で、
世界の3大感染症である結核、エイズ、マラリア対策に対する具体的な対策目標を定めた合意の取りまとめに貢献
するなど、海外の感染症対策を積極的に支援するようになっています。結核については、当事者、当事国の力だけ
では解決が難しい問題であることが認識され官民をあげた組織や機関が一つの目標を目指した対策であるストップ
結核パートナーシップが国際的に重要な結核対策戦略となっています。2000年に「アムステルダム宣言」が、2001年
に「ワシントン・コミットメント」が出され本格化し、2001年には結核罹患率が4(対10万人)と低いカナダが先進国の
中で熱心に取り組みをはじめて、わが国においてもストップ結核パートナーシップ日本が立ち上げられています。
2008年の時点でパートナーシップは700以上にもなっています。わが国の中で最も結核罹患率が高い地域を抱える
関西の結核対策においてもパートナーシップ型の結核対策戦略が必要ではないかと考えています。
 わが国の結核対策も大きな曲がり角に立たされています。結核医療に関わる医師数の減少、結核病床の急速な
減少、保健所数の減少などとともに、社会的な偏在傾向が強まっており予断の許さない状況にあります。すでに
罹患率が低い先進諸国においては外国人の結核患者の割合が増え、結核対策の立て直しがなされています。
世界の結核問題が解決しないと自国の結核問題が解決しない状況になっています。自国の人々に対する結核対策
だけではなく、世界の結核に関心を持った結核対策の推進が今後は必要となってきています。
 結核対策の最大の脅威は、人々が現実に存在し続けている結核問題を忘れてしまうことにあります。コッホが
結核菌発見を報告した日3月24日を世界結核デーと定めたのはその意味からであります。「結核はまだある!」という
ことを世界中の人々が再確認する貴重な機会として、日本、アジア、世界の結核の状況を見つめ直してみましょう。

平成23年3月7日
関西大学社会安全学部
教授 高鳥毛 敏雄