だれひとり取り残されない外国人医療

外国人医療

2024年、日本に暮らす外国人数は過去最高となり、新型コロナウイルス感染症により落ち込んでいた外国人観光客の数も過去最高を記録しています。外国人の出身国をみると、ベトナム、インドネシア、ネパールなど、英語圏以外の国が急激に多くなっています。外国人の多くは仕事、勉学、観光などの理由で来日する人が多いですが、日本に居住あるいは滞在する間に、病気やケガなどで、病院を受診する場合も増えてきています。
多くの病院では多言語での対応が難しいために、言語やコミュニケーションが大きな課題となっています。それ以外にも、文化や宗教に配慮した医療ケアの課題、難民、無国籍、オーバーステイといった法的な立場に関連する課題など、医療現場では多くの課題に直面しています。一方、外国人にとっては、ほとんど日本語ばかりの環境のなかで、本国と異なる日本の医療制度を十分に理解できず、適切な病院をどのように受診すればいいのかわからないという声が聞かれます。女性の平均余命が世界一という長寿国になった日本の保健医療システムはすばらしいですが、日本で暮らす在日外国人、日本を訪問する訪日外国人には、その恩恵が十分に届いていない現状です。
日本WHO協会は、これまでにもさまざまなシンポジウムやセミナーを主催・後援し、外国人医療の啓発活動にかかわってきました。(2020年2月:ワン・ワールド・フェスティバルにおける医療通訳パネル・ディスカッション<https://japan-who.or.jp/about-us/notice/onefes/>、2022年11月―2023年1月:関西グローバルヘルスの集い:オンラインセミナー第6弾「だれひとり取り残さない外国人医療:外国人医療は人権です、当事者主体の取組み、医療通訳の仕組みづくり」<https://japan-who.or.jp/about-us/kgh/>)
このたび、JANPIA(日本民間公益活動連携機構)から休眠預金等活用法に基づく資金分配団体に採択され、2024年度から「だれひとりとり残されない外国人医療」事業を実施することになりました。
以下に事業の概要を説明します。

「だれひとり取り残されない外国人医療」事業

JANPIA(日本民間公益活動連携機構)

外国人医療において、各セクターで様々な取り組みが行われていますが、患者と医療機関を含む関係団体双方での認知度が低く生かし切れていません。また、医療機関が通訳派遣の適切な利用方法、通訳ツールの活用について理解していないなどの問題があります。そこで、当会が強みとする医療関連団体とのネットワークを駆使して、実行団体を支援していくことで、それらの取り組みが効果的に活用され、医療関係者や医療機関により適切な外国人医療が提供できる体制を確立し、外国人が安心して医療サービスが受けられる環境を整備します。

「だれひとり取り残されない外国人医療」事業 目次

社会課題と事業目的

  1. 在日外国人の国籍は多様であり、英語以外の言語での対応が必要な外国人が保健医療機関を受診する機会が増加しています。
  2. 国の外国人受入れ施策、自治体による共生支援、保健医療現場での外国人対応などが実施されていますが、言語や地域の多様なニーズに十分に対応できていません。
  3. まず、関西圏をモデル地域として地域を絞り込むことにより、実行可能性が高く、妥当性の高い事業をめざします。関西圏在住の外国人が安心して保健医療サービスが受けられるようなモデル的な環境整備を実施します。
  4. 従来はともすれば個別に行われてきた取り組み相互の連携と対話を重視し、行政、医療機関、民間企業の垣根を越え、ネットワークやICTを活用する地域の仕組みづくりを目指します。

関西の外国人状況

2023年12月末の全国の在留外国人数は過去最高の約341万人でそのうち関西の外国人数は約58万人です。(大阪:30万人、兵庫:13万人、京都:7.6万人、滋賀:4万人、奈良:1万8千人、和歌山:9千人)
今後も外国人は増加すると予測されます。中でもベトナム人が急激に増加しています。

 

予定されている具体的な活動内容

  1. 「既存システムを活用した多言語医療情報提供」
    既存の多言語医療情報を集約することにより、外国人が母国語だけでアクセスし保健医療に関する情報を入手でき、日本人医療者が日本語でアクセスし多言語の医療情報を入手できる。
  2. 「DEI(多様性、公平性、包摂)をめざす外国人医療環境整備」
    医療通訳者の質の向上をめざす研修、医療者に対する文化や宗教への対応能力を高める研修などを通じて外国人が安心して受診できる環境を整備する。

この2つの事業を実施することを契機に、出口戦略として、医療通訳者を使った外国人医療に関するエビデンスを得ることにより、診療報酬点数表に医療通訳士加算を図り、持続可能な外国人医療として制度化していきたいと考えています。

WHOインターンシップ支援
メールマガジン登録

刊行物(目で見るWHO)
賛助会員募集中