ラオス小児外科

ラオスは新生児や乳幼児の死亡率が東南アジアの中でも最も高い国です。
その原因のひとつに、子ども、特に産まれたばかりの赤ちゃんの手術が必要となったときに対応できる小児外科専門医がいないことがあります。日本WHO協会では、2020年7月に、ラオス人自らが小児外科専門医を継続的に養成できることをめざしたプロジェクトを立ち上げました。ラオス人が、ラオスの子どもたちのために、ラオスの若者を育てることができる日まで、根気強く活動を続けていきます。

ラオス小児外科 目次

背景

ラオスにおける新生児および5歳未満児の死亡率(1,000出生あたり)は、それぞれ22.7および47.3 であり、東南アジアで一番高いです。因みに日本の新生児死亡率は0.9、5歳未満児の死亡率は2.4であり、世界でも最も低い国のひとつです。日本と比較しても子どもの死亡率がかなり高いことがわかるかと思います。

WHOなどの支援により、ラオスでもEENC(Early Essential Newborn Care:早期必須新生児ケア)は広まってきており新生児死亡率は低下しつつあります。先天性疾患など新生児外科疾患はEENCの対象でなく、適切な時期に手術を受けられないために、新生児・乳幼児死亡率が高い一因になっています。ラオスには新生児外科専門医がいないうえに、自国で小児外科専門医を養成する制度ができていませんでした。

WHO西太平洋地域事務局(WPRO)では、Safe and affordable surgery(安全で利用しやすい手術)という発想を強調しています。日本WHO協会の「ラオス小児外科卒後研修プログラムの確立」の目標は、ラオスの現状や限られた資源の中でラオスの新生児や子どもたちが上質で安全な新生児・小児外科手術を受けられる持続可能なシステムづくりを目指しています。まさに、Safe and affordable surgeryの理念に沿ったものであると考えています。

グラフ 1

目的

日本では、基幹診療科(内科、外科、小児科等)のみならずsubspecialty(心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科等)も専門医制度に基づいて専門医が養成されています。例えば、小児外科は基幹診療科である一般外科のsubspecialtyなので、小児外科専門医を取得するためには、一般外科の専門医取得後、更に小児外科専門医になるための研修を受けてからsubspecialtyとしての小児外科の専門医資格を取得します。しかしながら、ラオスには外科のsubspecialtyである小児外科の専門医はいません。

現在ラオスで小児外科の専門的な手術ができるのは、首都ビエンチャンにあるラオス国立小児病院であり、小児外科を専門としている外科医は数名いるのみです。地方でも簡単な小児外科の手術は行われていますが、専門性を要する手術はラオス国立小児病院の数名の医師が担っているのが現状です。

小児外科専門医がおらず、専門医育成プログラムがないこと、つまり専門的な知識や技術を指導する人材がいない、さらには小国で経済的余裕がないことために自国で小児外科専門医を育成することは簡単なことではありません。 そこで、われわれは、先ず、ラオス人の小児外科専門医を養成し、次いで小児外科卒後研修プログラムを確立し、そのプログラムに基づいてラオス人の指導医(専門医)が3年かけてラオス人の小児外科卒後研修する制度を確立するプロジェクトを立ち上げました。

日本の小児外科専門医をベースとした小児外科専門医制度ですが、我々の信念としては日本の制度等のコピー&ペーストではなく、ラオス人がラオスの文化や社会的背景に沿った独自の専門性制度を作り上げることを支援することです。この活動で人材の育成を行うことによって、支援が終わった後も、「ラオス人がラオス人の手によって小児外科医を養成し、ラオス独自の小児外科専門医制度を確立する」ことができるような支援を目指しています。

活動

当初は日本人医師を現地に派遣して実際に手術指導をすることを計画しておりましたが、2020年より世界中で流行したCOVID-19の影響を受け、渡航が不可能となりました。これにより活動内容を遠隔に切り替え、2021年3月まで遠隔による支援を行ってまいりました。

遠隔で行っている活動としては下記の通りです。

  1. デジタル教材の作成 : 『最新新生児外科学』(編集:窪田昭男・奥山宏臣)のラオス語版作成
  2. オンラインセミナーの実施 : 小児外科疾患に対する臨床講義に加え、小児外科診療の治療成績向上を目的に術後管理、放射線画像診断、栄養管理等の臨床講義をオンラインで実施
  3. オンライン症例検討会の実施 : ラオス側の受講生に診断、治療方針決定に難渋した症例あるいは死亡した症例を提示して戴き、日本側講師3名とで症例検討あるいはデス・カンファランスをするものす。ここで提示した症例は専門医取得のための必要症例としてカウントする。
  4. 遠隔コンサルテーションの実施 : 実際の症例を遠隔コンサルテーション・シート(Remote consultation sheet)を用いてコンサルしてもらい、リアルタイムで回答し、診療や術式選択等に役立てることを目的として実施。
  5. 国際シンポジウムの開催 : ラオスでの小児外科の啓発のために、年一回シンポジウムの開催を支援

「小児外科医の養成」という技術面での指導を主とする支援をオンラインのみでおこなうことは簡単なことではありませんでした。

しかし、実際にオンラインで支援を行っていく中で、遠隔で症例のコンサルテーションを行う新たなシステムが築き上げられるなど、新たな国際保健の支援の形がみえてきました。

また、2022年4月にはプロジェクトマネージャーの勝井由美さん(看護師)がラオスへ赴任しました。現地での活動を通して、現地の関係者とより綿密なコミュニケーションをとりながら、現地のニーズに沿った活動にしていきたいと考えております。
さらに、2022年5月からラオスの国境が開放されたことを受け、当初予定していた日本人医師のラオスへの派遣も計画しております。

期待される成果

2022年度はこのプロジェクトの3年目であり、9月には正式にラオスの小児外科専門性制度が開始され、2022年度末にはラオスで初めてとなるラオス人小児外科専門医が誕生する予定です。その後、彼が中心となってラオス人に小児外科卒後研修を行うことで今後も継続的に年に1、2名の小児外科専門医が輩出され、ラオス人の手によって小児外科専門医が輩出される見込みです。

今後、この小児外科専門医たちが地方に広がり、ラオス全体の新生児・小児外科の治療成績の向上、ひいては新生児・小児の死亡率の減少に寄与することが期待されています。

ラオスからサバイディ !

2022年4月にプロジェクトマネージャー・勝井由美さんが現地に赴任しました。
ラオス国立小児病院での活動など、ラオス現地から活動状況についてお届けします!

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