2月中旬、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、「新型コロナウイルスワクチンのうち、75%がわずか10カ国で接種されていて、130カ国以上は1回目の接種も受けられない状況にある」と指摘し、ワクチン格差の解消を訴えました。2月24日に、WHOが主導しているCOVAXという低中所得国に向けた公平なワクチン分配システムにより、アフリカのガーナに初めてワクチンが届きました。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、自国ファーストの施策により、世界全体の不平等がますます顕在化していました。2021年1月にアメリカ合衆国大統領が交代して以来、国際協調の流れが少しずつ確かな歩みを始めたようにみえます。感染症に国境はありません。地球上のすべての国や地域でCOVID-19が収まらない限り、ヒトやモノの交流の制限を解除するわけにいかないのです。すべての生き物が暮らし続けられる健康な地球を次世代に渡そうという持続可能な開発目標(SDGs)が訴えた原点を見据え、WHOが国際協調のリーダーシップを発揮することを心から期待しています。
さて、2021年2月に、国立国際医療研究センター(NCGM)が実施する医療技術等国際展開推進事業「ラオス小児外科プロジェクト」の初年度活動が無事に終了しました。公益社団法人日本WHO協会として、初めての海外プロジェクトでした。本来は、プロジェクト・リーダーの窪田昭男先生、大阪大学の奥山宏臣教授(小児成育外科学)らがラオスに渡航して技術指導をする予定でしたが、COVID-19のために現地への渡航は一切できませんでした。そのなかで、ZOOMを用いたオンラインセミナーやWhatsAppによる症例検討会を実施し、専門医の指導者となるラオス人外科医師の育成を行ってきました。日本とラオスを結んだ国際シンポジウムでは活発な討議が行われ、ラオス側のレベルの高い発表とプロジェクトに対する熱意を感じました。日本人が訪問することはできませんでしたが、その逆境をチャンスととらえ、新生児外科という極めて高度な技術支援がオンラインにおいて可能な面もあるという画期的な新しい成果をあげつつあります。
日本以上に外出制限などの厳しい状況のなか、自らの技術の研鑽に励むラオスの医療者たちの姿をみると、今後の発展に大いに期待したいと考えています。
公益社団法人 日本WHO協会
理事長 中村安秀