2021年6月には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の職域接種がはじまりました。7月からは多くの区市町村で基礎疾患を有する方への接種がはじまります。基礎疾患をもつ方々は、一日千秋の思いでコロナワクチン接種の順番が来るのを待っておられました。接種率をあげることだけに注視するのではなく、為政者の皆さんには、だれひとり取り残さない、病気をもつ人に寄り添うワクチン行政を期待したいです。
さて、6月30日(水)にグランフロント大阪のナレッジシアターで「Nursing NOW :看護の力で大阪を元気に」が開催されました。2020年1月16日に日本で最初のCOVID-19患者が確認されたあと、日本のすべての保健医療の関係者・病院やクリニック・行政機関機関はCOVID-19と対峙してきました。それから1年半近くがすぎ、まだ過去形で語るわけにはいきませんが、大阪は、現時点で最も過酷な対応を強いられた都道府県の一つです。
人びとのいのちをまもるための感染症対策の最前線の現場において、COVID-19の流行に敢然と立ち向かった大阪府看護協会の軌跡が見事に描かれていました。宿泊療養施設、コロナ重症センター、検体採取外来、コロナワクチン接種などのための人材確保と人材派遣、地域における介護・福祉現場への感染対策支援、医療従事者に対するメンタルサポートなど多くの活動が同時並行的に行われていました。看護の専門性を発揮すると同時に看護職の身体をまもる体制づくりに配慮されていました。1年余りにわたり走り続けてきた軌跡の現場からの報告でした(You-tubeのアーカイブ配信もあるようです)。
災害時の人道支援の世界では、完璧な対策はないことを前提に、いつ、だれが、どこで、何を、どのようにしたのかという記録とともに、なぜ実施したのか、なぜ実施できなかったのかを記録します。COVID-19対策においても、日本各地のすばらしい実践活動をいまのうちにきちんと記録しておく重要性を痛感しました。政府に任せるのではなく、民間でアーカイブを作る必要があるのかもしれません。
公益社団法人 日本WHO協会
理事長 中村安秀