東日本大震災から12年。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のため足を踏み入れることができず、2023年 1 月末に 3 年ぶりに被災地を訪問し、震災が起きた2011年が「うさぎ年」だったことに気づかされました。
粉雪の舞う岩手県陸前高田市の奇跡の一本松ホールで「はまかだ交流会」が開催されました。「はまかだ」とは、「はまってけらいん、かだってけらいん (仲間に入って、話しましょう) 」という地元の言葉の略称。 陸前高田市では、被災直後から、保健医療行政、地元の医療機関、外部から駆け付けた医療団体やNPO / NGOが参加して、保健医療の調整や地域の健康推進などを行う「未来図会議」が定期的に開催されてきました。「はまかだ」は、その継続的な活動のなかから生まれました。
交流会当日は、多くの陸前高田の市民グループがブースを出していました。 社会福祉協議会、保健推進員、食生活改善推進員という歴史のある団体とともに、震災後に新しくできたNPOや団体も少なくありませんでした。 子育て、整体、お菓子、昔遊び、くらし、思い出写真などさまざまな活動団体が隣りあっているので、高齢者の方々と幼児連れの家族がいっしょの場で「はまかだ」を楽しんでいました。 医療機関が提供する狭い意味での健康増進ではなく、まさにウェルビーイング (身体的、精神的、社会的にいきいきと生活する状態) を多世代の人々が享受していたことが印象的でした。
2023年 4月 7日の世界保健デーに、世界保健機関 (WHO) は創立 75 周年の記念日を迎えます。 ことしテーマは「Health for All (すべての人に健康を !) 」。1978年のカザフスタン共和国のアルマアタで開催されたプライマリヘルスケア国際会議の合言葉が、Health for Allでした。 いま、「すべての人に健康を!」というと、ウクライナの戦地で暮らす人々、COVID-19で亡くなった方とその家族や後遺症で悩む方々のことがまっさきに脳裏に浮かびます。 しかし、日本においては、阪神淡路大震災、東日本大震災、福島原発事故、多くの自然災害で被災された方々のことを忘れてはなりません。
被災地の皆さん方にとって、月並みですが「うさぎ年」にふさわしく、ことしが飛躍の年になりますように、そしてHealth for All、すべての人が健康でウェルビーイングな日々を過ごせますようにと、祈念いたします。
公益社団法人 日本WHO協会
理事長 中村安秀