日本WHO協会からのお知らせ

2023年6月 : G7 広島サミットを一過性のお祭りで終わらせないために

G7 広島サミットにおいて、2023年5月20日に首脳コミュニケ(G7 Hiroshima Leaders’ Communiqué)が発表されました。 ウクライナのゼレンスキー大統領の参加などの大きな政治的な動きの中で、日本国内では報道される機会限られていましたが、保健医療に関しても重要な課題がいくつも提示されました。ワクチン製造能力、パンデミック基金、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成など国際保健への投資を強調していました。

私が個人的に関心をもったのは、以下の 2 点です。

「2025年末までにパンデミック前の水準より改善させることを達成するために、プライマリー・ヘルスケア(PHC)の支援、必須の保健サービスの発展及び回復を通じて、各国がUHCを達成できるよう、グローバルなパートナーと共に支援することに改めてコミットする」

少なくとも2020年以降のG7首脳コミュニケにおいて、PHCという言葉が発せられた記憶がありません。 ベトナム戦争終結後のつかのまの東西冷戦の緊張緩和(デタント)の時期だった、1978年にアルマアタ(当時ソビエト連邦、現在カザフスタン共和国)で開催された会議で採択されたのがPHCでした。

もう一つは、保健医療というよりも栄養分野での提言です。「栄養は、人間中心のアプローチの観点から基本的なものであり、我々は、学校給食プログラムを通じたものを含む健康的な食事へのアクセス改善の重要性を強調する」

学校給食プログラムが、首脳コミュニケの文書に記録される時代になったことを素直に喜びたいと思いました。

プライマリヘルスケア(PHC)も学校給食も、それらを今後どのように発展させるのかという戦略が問われています。 2000年に開催された九州・沖縄サミットを契機に、エイズ・マラリア・結核という三大感染症対策が国際政治の課題となりました。 その後のグローバル・ファンドの設立といった世界の大きな潮流を、日本で開催されたサミットが創り出したことは世界の専門家たちから高く評価されていました。

G7 広島サミットを一過性のお祭りに終わらせるのではなく、今後も保健医療分野での国際的な協力の充実をめざすためには、国境を越えて官民が協力して継続的なアドボカシーを行う必要があります。 会議の成果が、それを本当に必要としている人たちの手に届きますように・・・。

公益社団法人 日本WHO協会
理事長 中村安秀

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