日本WHO協会からのお知らせ

2024年10月 : 少産 ・ 長寿を達成した理想郷

9月26日に大阪グランキューブで開催された Japan Health において、私は「少産 ・ 長寿を達成した理想郷はどこにいくのか?」という基調講演をさせていただきました。 Japan Health とは、医療機器やヘルスケア産業に関する国際見本市をドバイ、欧州、米国などで開催してきた実績を持つ Informa Markets が大阪万博において、2025年 6月25日 – 27日に開催予定のイベントです。 今回は、そのプレセミナーという位置づけでした。

アジアで最も保健医療指標の悪い国の一つであるパプア ・ ニューギニアの公衆衛生医師は、「私たちは、多産 ・ 短命と日々闘っています!」といいます。 彼女たちからみると、日本は真逆です。「少産 ・ 長寿」を達成した理想郷のジャパンであるはず。 なのに、日本から届く情報は、少子高齢化社会の問題点ばかり。「元気のいい高齢者は日本にいないのですか?」という素朴な質問を受けました。

これからは、少子高齢化社会の問題点、課題先進国としての日本、といったありきたりの表現はやめて、長寿を達成した日本の「ウェルビーイングの再発見」を世界に発信していきたいと痛感しました。

持続可能な開発目標 (SDGs) では、すべての人々が、経済的な困難なしに、必要な時に、必要な場所で、ニーズに応じた質の高い保健医療サービスに十分にアクセスできるユニバーサル ・ ヘルス ・ カバレッジ (UHC) の達成が大きな課題です。 最近、WHO は、UHC 達成のために必要不可欠な介入のほとんど (90 %) はプライマリヘルスケア (PHC) アプローチを通じて実施可能であり、2030 年までに 6,000 万人の命が救われ、世界全体の平均寿命が 3.7 年伸びる可能性があると言及しています。

PHC とは、1978年にアルマアタ宣言で提唱された「すべての人々に健康を!」という目標を達成するための世界戦略でした。 健康は基本的人権であり、住民の完全参加のもとで、保健医療サービスの公平な提供やユニバーサル ・ アクセスをめざしています。 アルマアタ宣言の時代には想定されていなかった、ICT や AI 技術やプラネタリーヘルスなどの気候変動対策などを加味して、多くの国ではいまも PHC を保健医療戦略の軸として取り組んでいます。

日本においても、新しい時代にふさわしい UHC と PHC のあり方を追求すると同時に、長寿を達成した国だからこそ発信できる、高齢者、子ども、障害者など多様な人々のウェルビーイングを明らかにする活動が興隆することを期待しています。

公益社団法人 日本WHO協会

理事長 中村安秀

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