2024年10月24日は世界ポリオデー (the World Polio Day) でした。 ユニセフの分析によれば、2023年にポリオ感染した小児は世界全体で 541 人であり、その 85 % は紛争被災国あるいは脆弱な国 (たとえば、アフガニスタン、コンゴ民主共和国、ソマリア、南スーダン、イエメンなど) で生じていました。
世界中で、ポリオの野生株の患者がみつかっているのはアフガニスタンとパキスタン。 しかし、紛争や自然災害、人道危機などにより、多くの国々で医療システムの崩壊、水や衛生設備のインフラの破壊などにより、ワクチン由来のポリオウイルスによる再流行を招いています。 世界保健機関 (WHO) も、ファクトシートにおいて「感染した子どもが一人でもいるかぎり、全ての国の子どもたちにポリオ罹患のリスクがあります。 最後に残った国からポリオを根絶できなければ、世界的にポリオが再流行する可能性があります。」と言っています。
パレスチナ自治区のガザにおいて、ポリオ患者が発生し、2024年 9月から 10 歳未満の子どもにポリオワクチンの一斉投与が始まりました。 そのきっかけになったのが、下水疫学検査でワクチン由来の 2 型ポリオウイルスが見つかったことでした。 日本では札幌市や神奈川県など限られた自治体で行われていて、まだまだ普及の途上にあるのに、紛争地のガザで下水疫学検査が行われていることにも驚きました。 そして、1 人の患者が出たことを契機に、国際社会が停戦を要求し、予防接種の一斉投与が実施されました。 第 1 ラウンドは無事に 56 万人の子どもたちに接種できたのですが、第 2 ラウンドでは接種会場に指定されていた医療施設が爆撃され、子どもたちにも負傷者が出たとのニュースに衝撃を受けています。
1978年にプライマリヘルスケアを提唱した有名なアルマアタ宣言の 第 3 項 には、「人々の健康を増進し、守っていくことは、持続的な経済と社会の発展に不可欠であるとともに、より良い生活の質と世界平和に貢献することです。」とあります。
11月 4日には、松本ロータリークラブが主催するポリオプラス基金の一環として「ポリオワクチン接種を通じて子どもと家族を守る : パレスチナやアジアの現場からの学び」というタイトルで講演させていただきました。 高校生を含む多くの市民の方々が趣旨に賛同し、イベントに参加されている姿に感動しました。
また、11月21日の「関西グローバルヘルス (KGH) の集い ・ オンラインセミナー第 9 弾」では、清田明宏氏 (UNRWA 保健医療局長) が現地から登壇していただきます。 ことしの世界健康デーのテーマは「My health, my right (わたしの健康、わたしの権利) 」。 ぜひ、多くの人に現場からの声を聞いていただき、平和と健康について、思いを深めていきたいと考えています。
公益社団法人 日本WHO協会
理事長 中村安秀