日本WHO協会からのお知らせ

2024年12月 : 医療通訳士という新しい職種への大きな期待

いまから 15 年以上も前のことになりますが、関西で外国人医療の実践を行っていた 8 人が意気投合し、本業が終わった後で大阪梅田のレストランに集合し、遅い夕食を食べながら、医療者と外国人患者の言語コミュニケーションについて定期的に議論を重ねました。 日本語ができない患者や住民 (国籍は問わない) に対して、日本の医療を安全に提供するためには、保健医療分野に造詣の深いプロフェッショナルな通訳士が必要不可欠であるという共通認識に至りました。 グローバル化する日本社会のなかで新しい職種を創造するというチャレンジでした。私たちは、「医療通訳士」という名称に辿りつき、最終的に商標登録も獲得しました。

2009年 2月、各界から 45 名の発起人の方々の賛同を得て、「医療通訳士協議会 (JAMI) 」の設立総会を大阪大学で開催しました。 JAMI の目的は、医療通訳士に対する適正な報酬と身分を保障するための制度の整備と、医療通訳士の技術向上のための活動を行うことです。 北海道や九州からの参加者も含め、医療関係者、NGO、自治体、大学、研究機関、企業、学生、メディアなど、多様性に富んだ 100 名近い方々が集りました。 当時は外国人医療に関心を寄せる人は少数でしたが、みんな熱い思いと卓越した行動力で、ほとんどボランティアの形で、分野や専門を越えた真の意味での学際的な取り組みが進んでいきました。

その後、2020年に国際臨床医学会認定の医療通訳士 (R) 制度が発足し、いまでは 14 言語 423 名の医療通訳士が活躍しています。2024年11月23日には、南谷かおり大会長 (りんくう総合医療センター国際診療科)のもと「第 9 回 国際臨床医学会学術集会」が開催されました。 医療通訳士の方々が主役になり、双方向で意見交換を行う「第 1 回 医療通訳士ワークショップ」が参加されました。 ワキモト 隆子さん (三重大学医学部附属病院) と北間 砂織さん (北海道大学 / SEMI さっぽろ) という経験豊かな医療通訳士がファシリテーターとなり、私が座長を務めさせていただきました。 医療通訳士のやりがいや大変さ、今後の地位 ・ 収入の向上のために必要なことなど、和気藹々とした雰囲気のなかで熱い議論が続きました。 医療通訳士の国家資格が欲しい、医療通訳サービスを健康保険法の診療報酬算定に組み込んでほしいなど、様々な希望が出されました。

医療通訳士の必要性と重要性に関するアドボカシー活動を行うとともに、医療通訳士に対する満足度やコストの評価など科学的エビデンスを蓄積していく地道な研究の必要性を痛感しました。 その際の主役は、当事者である医療通訳士、日本語ができない患者や住民、そして日本の医療者たちです。 15 年前に設立した医療通訳士協議会の灯が、新しい形で引き継がれていく予感がして、感無量の学会でした。

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