元日に発生した能登半島地震で亡くなられた方のご冥福をお祈り申しあげるとともに、被災地のすべてのみなさまに心からお見舞い申しあげます。
能登半島地震から 1 か月。 1月31日現在で公表されている避難所数は 521 か所、避難されている方は 1 万 4 千人以上にのぼります。
世界では1990年代から現在に至るまでの国際緊急人道支援の反省や教訓から、国際 NPO、赤十字 ・ 赤新月社、国際機関などにより、被災者の生命と安全、尊厳と権利を尊重した支援を行うための最低基準を共有しています。 このスフィア基準は、内閣府が2016年にまとめた「避難所運営ガイドライン」(平成28年) ( 1.81 MB ) において、避難所の質の向上を考えるときに参考にすべき国際基準として紹介されています。
この基準をまとめた「スフィア ・ ハンドブック」は、JQAN (支援の質とアカウンタビリティ向上ネットワーク) のホームページ で参照することができます。
スフィア ・ ハンドブックでは、被災状況を迅速にアセスメントして、援助機関同士の調整と協働のもとで、人間中心の人道的対応を実施すべきであるといいます。 保健医療とともに、水と衛生 (トイレとゴミ) 、食糧と栄養、毛布や衣類などのNon-food itemsや住居の重要性が指摘されています。 たとえば、水は一人当たり平均して 1 日に最低 15 リットルが基準です (もちろん、支援の状況や段階により量を決める必要があるので、これが絶対値ではありません) 。 避難所内の居住空間では、一人当たり 3.5 m2 の居住スペース (調理スペース、入浴区域、衛生設備を除く) というのが基本指標です。
もちろん、この 400 ページを超える大部のハンドブックの内容は、いかなる場合にも適応すべきという性格のものではありません。 ただ、1 次避難所、2 次避難所で被災した方の健康やウェルビーイングを改善したり、予防したり、取り組んでおられる方にとって、国際緊急支援の経験と英知がコンパクトに詰まったハンドブックから、現場で活用できるヒントが得られるのではないかと思います。
東日本大震災のときに現場で奮闘されていた行政の方に、震災 1 年後の防災シンポジウムでスフィア基準の存在をお話ししたところ、もっと早く知りたかったと嘆いておられた姿が忘れられません。差し出がましいようで恐縮ですが、能登半島地震の支援の現場で奮闘されている方々に、スフィア ・ ハンドブックの存在をお届けしたいと思った次第です。
「災害や紛争により影響を受けたすべての人びとは尊厳をもって生きる権利と人道支援を受ける権利を持っている」というスフィア ・ ハンドブックの理念が、支援する人びとにも支援を受ける人びとにも届きますように・・・・
公益社団法人 日本WHO協会
理事長 中村安秀