日本WHO協会からのお知らせ

2025年11月 : 公衆衛生に国境はない!

2025年10月29日、静岡市で開催された 第 84 回 日本公衆衛生学会において、『公衆衛生に国境はない』という名のもとに、シンポジウムと自由集会を開催しました。 自由集会については、日本 WHO 協会が後援させていただきました。 世話人は、大西眞由美さん (長崎大学) 、仲佐保さん (シェア) 、西原三佳さん (HANDS) と私。 多くの医療者や学生の皆さんに集まっていただいたのがうれしかったです。

私が仲間とともに、第 1 回 自由集会「公衆衛生に国境はない」を公衆衛生学会で開催したのは1999年でした。「日本の地域保健で現在生じている問題のほとんどは、日本の特殊な課題ではなく、地球規模で考えればすでに多くの国で試行錯誤が行われている課題である」という認識から、「世界各地で同時代性に行われているさまざまなチャレンジから謙虚に学び、グローバルな視点を共有すること」を目指しました。

それから、四半世紀が経過しました。 いま公衆衛生学分野においても、国境を越えた相互交流がすすんできました。 かつては、途上国 (developing countries) と呼んでいた国で、国際保健医療協力として深刻な貧困がもたらす保健医療の課題に向き合い奮闘してきましたが、いまや日本国内においても「子どもの貧困」は大きな社会課題です。現在では途上国とは呼ばず低中所得国 (low-middle income countries) と呼びますが、国の所得の多寡にかかわらず、同時代的に発生した課題に対して、地球規模でお互いに情報交換し、学びあう時代が到来したということができます。

シンポジウムでは、當山紀子さん (大阪大学大学院医学系研究科) からは日本発の母子健康手帳が海外に広がり、海外から学ぶ時代に移りつつあること、桑山紀彦さん (地球のステージ) からは東日本大震災、ウクライナ、ガザなどの心理社会的支援がお互いに響きあっていること、岩本あづささん (国立健康危機管理研究機構) からは日本国内の在住外国人の保健医療の課題が国際保健医療協力と深くつながっていることをお話しいただきました。

私たちが「わが国の医療をグローバルな視点から見直し、日本の保健医療の成果を国際保健の現場に応用し、国際保健で学んだ経験を日本の保健医療の発展に活かしていきたい」と宣言したことが現実の課題となりつつあります。 いまは内向きの時代だという声がよく聞かれますが、保健医療関連の学会などで見る限り、医療や健康をキーワードに海外で活動したいという熱い思いを持つ若い世代の人は決して少なくありません。 彼ら ・ 彼女らが安心して海外に羽ばたき、その経験を日本国内に持ち帰ることのできる場を提供することが、いまの社会に求められているのかもしれません。

保健分野で国際的に活躍する人材の育成は、日本WHO協会の設立以来のミッションです。 グローバルヘルスに関心を持つ人を増やし、裾野をさらに広げていく必要があると考えています。

公益社団法人 日本WHO協会

理事長 中村安秀

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