日本WHO協会からのお知らせ

2025年4月 : 神は細部に宿る!

日本の母子健康手帳 (母子手帳) が2025年 4月 1日より、大きく変わります。 といっても、手に取って見ただけでは、どこが変わったのかわからないかもしれません。 実は、発育曲線のグラフの目盛りの最小値が見直されました。 赤ちゃんの体重は 1 kg だったのが 0 kg に、身長は 40 cm だったのが 20 cm に変わりました。

これは、小さく生まれた赤ちゃん (リトルベビー) の親たちの長年の悲願でした。 いま、日本では、生まれたときの体重が 1,000 グラム未満の「超低出生体重児」が毎年 2500 人くらい生まれます。 お母さんにお話を聞くと、小さく産んでしまい、保育器の中でたくさんの管につながれた姿を見ると、申し訳ない気持ちや不安でいっぱいになりますとおっしゃいます。 そして、母子手帳のグラフを開くと、わが子の出生時体重を書き込む場所がないのです。 なぜなら、いままでの母子手帳の体重グラフは 1 kg から始まっていたからです。 2022年に私たちが実施した調査では、1,000 グラム未満のリトルベビーの親の 94 % が、母子手帳の内容に、「不快な気持ちになったことがある」と回答しました。 母子手帳はいまや世界 50 以上の国や地域で使われている、日本が世界に誇る発明品です。 しかし、発育曲線のグラフの目盛りひとつで、リトルベビーの家庭の思いを踏みにじってしまうこともあるのです。

こども家庭庁は今回の見直しについて「すべての子どもの成長を記録できる母子健康手帳とするために見直しを決めた」と言明しています。 長年にわたり、母子手帳のグラフの目盛りの改善を訴えてきたひとりの小児科医として、「だれひとり取り残されない」という今回のこども家庭庁の決断には大きなエールを贈りたいと思います。 神は細部に宿るといいます。 同時に、ハーバード大学国際保健学のマイケル ・ ライシュ教授は、保健医療システムにおいて「悪魔は細部に宿る」と警鐘を鳴らしていました。

乳児死亡率が世界最良の国の一つである日本。すばらしい母子保健システムと国民皆保険制度が、これまでの健康を維持するのに役立ってきたことは衆目の一致するところです。 ただ、想定以上に加速する超高齢社会のなかで、システムの細部に悪魔が宿っていないだろうか? 本当に「だれひとり取り残されない」保健医療システムなのだろうか? という真摯な問いかけが必要な時代になってきていると思います。

2025年 4月 7日の WHO 世界健康デー 2025 のテーマは、「Healthy beginnings, hopeful futures (健やかなはじまり、希望のある未来へ) 」。 まさに、母親と赤ちゃんが主役です。 日本 WHO 協会では、「世界健康デー 2025」イベントを 4月 7日 (月) 14 : 00 – 16 : 30 に、大阪商工会議所 ・ 国際会議ホールで開催します。 WHO 経験のある医師のお話しや、健康デーの動画入賞作品の上映など、楽しく有意義な時間となるよう企画しています。 お子さん連れの参加も大歓迎です。 関心ある方のご来場を心から、お待ちしております。

公益社団法人 日本WHO協会

理事長 中村安秀

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