日本WHO協会からのお知らせ

2020年4月

新型コロナウイルス病(COVID-19)による世界的流行(パンデミック)の猛威が地球全体を覆いつくしています。WHOによれば、4月1日現在、世界全体の感染者数は約82万人、死亡者は4万人以上にのぼります。WHOは世界を6つの地域に分けて管轄しています。そのうち、2つの地域では、感染者の報告数がまだ1万人以下です(南東アジア5,175人、アフリカ4,073人)。国連難民高等弁務官事務所で仕事していたときに、緊急支援の現場では、プロフェッショナルは報告の出ていない地域こそ何が起きているのか注視すべきだと教えられました。手を洗う水が十分になく、マスクや消毒液の供給ができず、検査できる医療施設から遠く離れた地域の多い、アフリカや南東アジア(インド、パキスタン、インドネシアなど)のことが気がかりです。しかし、世界中で国境封鎖や外出禁止が実施されています。国際保健医療協力が最も必要とされているときに、最も必要とされている地域の人びとのそばに寄り添っていけないもどかしさを痛感しています。
感染症に国境はありません。新型コロナウイルス病は、自国だけで解決できる感染症ではなく、地球規模での長期戦になると予測されています。イタリアやスペインやニューヨークでの医療現場の報道に接して、持続可能な開発目標(SDGs)が提唱していたユニバーサル・ヘルス・カバレージ(UHC)の概念を噛みしめています。SDGsでは、医療保険や医薬品・ワクチンの供給などに焦点があてられていましたが、マスクやアルコール消毒剤、検査、人工呼吸器などが不足するとユニバーサル・ヘルス・カバレージが簡単に破綻することを教えられました。
先日、世界小児科学会理事会のZOOM会議が開催されました。遅かったという批判はありますが、WHOが緊急事態宣言を出し、世界各国からの情報を分析しガイドラインを発行し、新薬やワクチン開発などの対策に乗り出していることについて、世界の専門家からは評価と期待を得ていました。ただ、今回のような世界規模での感染症対策において、先進諸国が自国のことで精いっぱいになっているときに、加盟国の自主性を尊重しつつ国際機関がどのような役割を果たしていくのか、今後の大きな課題です。現時点では、保健医療に関するグローバル・ネットワークのかなめとしてのWHOの調整機能に期待しています。

日本WHO協会では、新型コロナウイルス病対策は長期戦になると考え、今後はできるかぎりオンラインの形でセミナーやイベントを開催していくことを考えています。新型コロナウイルスが蔓延する前と後では、世界の景色が激変しました。この環境の急変のなかで、新しいチャレンジを続けていこうと考えております。世界各地でオンライン・セミナーなどの経験をお持ちの方々に、ぜひいろいろと教えていただきたいと思います。
今後とも、皆さま方のご指導ご鞭撻のほど、何とぞよろしくお願いします。

理事長 中村安秀

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