日本WHO協会からのお知らせ

2020年7月

全国で緊急事態宣言が解除され、都道府県をまたぐ移動も解禁になりました。大都市ではターミナル駅や通勤電車などの混雑がもとに戻りつつありますが、いまだに人が密集している空間を見るとどこか違うぞと違和感を覚えます。

思い起こせば、日本に留学したインドネシア人やラオス人の医師たちが、最初に驚愕するのが日本の通勤電車の込み具合でした。息もできない空間に沈黙のまま密集するという日本の日常生活に慣れることから、彼らの留学生活が始まりました。

いま、ウイルスと個人個人の人との共生の姿が世界で模索されています。英語圏では「ニュー ・ ノーマル」。インドネシアでも「Normal Baru」(新しいノーマル) が電車の乗車人数を制限する、といった形をとって根付き始めています。一方、日本では、学校ではあまりに細かな生活の隅々にまで指示が届いているのに対し、満員電車などは元の「アブノーマル」な三密状態に戻っていくのではないかと危惧しています。

続いて、国や地域、コミュニティ相互の共生を考える必要があります。世界の多くの地域でロックダウンとして、都市封鎖や国境封鎖が行われました。日本なら都道府県相互、アメリカ合衆国なら州同士の行き来が制限されました。日本の2020年4月 ・ 5月の訪日外国人数は前年同月比で99.9%の減少になりました。いつまでも、このような封鎖や鎖国体制を続けるわけにはいきません。しかし、以前のように世界中にサプライ ・ チェーンを張り巡らせ高収益をあげることがグローバル化だと語る状況に戻ることはむつかしいでしょう。今後は、地道に地域におけるスロー ・ ライフを大切にしたなかで、今回学んだオンライン会議やセミナーを駆使して、国や地域相互の人的物的交流を適度に行うバランス感覚が問われています。

3番目の課題は、持続可能な地球の中で生き物や環境も含めた共生の概念です。以前から、ウイルスが動物とヒトの双方に感染することを前提に、グローバルヘルスの世界では、ヒトの感染症だけでなく、家畜や野生動物の感染症も含めて、専門領域を超えて協働するワン ・ ヘルス (One Health) が提唱されていました。いまや「planetary health」(地球の健康) が話題になります。地球の主人公はヒトだけではありません。京都大学の山極寿一学長は、地球は「ウイルスの惑星」だと発言されています。ヒトや家畜や野生動物や昆虫が暮らす地球で、ウイルスとともにどのように共存していくのかという壮大な物語を編み出していく必要があります。

新型コロナウイルスと共生する社会や地球をイメージして、これからも、ヒト、コミュニティ、地球という3つの次元から発想していきたいと思います。

今後も、皆さま方のご指導ご鞭撻のほど、何とぞよろしくお願いします。

理事長 中村安秀

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