2020年1月30日、世界保健機関(WHO)は、中国から広がっている新型コロナウイルス感染に対し、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(Public Health Emergency of International Concern:PHEIC)を宣言しました。
以前のようなコレラやペストの大流行を想定していた国際的な対応でだけでは不十分だということで、WHOが2005年に国際保健規則を改訂し、新しい感染症に対して迅速に対応できるように準備していたのが、今回の緊急事態宣言でした。
中国では2019年11月に武漢市で新型ウイルスの流行が始まったといわれ、いまも多くの患者は中国に集中していますが、日本をはじめ多くの国で感染が確認されています。
日本WHO協会にも、多くのご意見が寄せられています。メールで不安を訴えられる方や、国際機関や政府の対応に対する異論を述べられる方もいます。医学的な見地からは、決して感染力の強いウイルスではなく、呼吸器感染症を引き起こす従来のウイルス感染症と共通した臨床症状を呈しているようにも見えます。現在、この新型ウイルスの生物医学的な解明と同時に、臨床症状や疫学的特徴の分析が急ピッチで行われています。科学的な事実に基づいた適切な判断が、迅速に実施されることを期待します。
個人的なことになりますが、今回の新型コロナウイルスに対する社会的な対応を見ていると、2003年のSARS流行時に大阪大学の大学院生とともに行った「SARS渦中の香港在住日本人」の方々への調査を思い出しました。SARS渦中の香港の企業駐在員の方々の90%以上が「新しい病気ゆえに、多くの情報があっても、何が正しいのかわからなかった」ことがストレスだったと述べ、「日本から見捨てられた気がした」と回答された方も少なくありませんでした。一方、香港にとどまった者同士の支えあいや、日本や外国の家族や友人からのお見舞いの言葉がこころの支えになったと述懐されました。
武漢にとどまられた方々、いま中国におられる方々。日本人だけでなく、感染症の発生地の間近で暮らしておられるすべての方々に、「加油!」のことばをお伝えしたいです。きっと遠くない近未来に、ご家族や友人と再会して、当たり前のように握手してハグできる日がくることを祈っています!
理事長 中村安秀