アドバイザリー・グループの皆様からのご挨拶
WHOで活躍された経験を持ち、いまもグローバルヘルスに深くかかわっておられる有識者の方々に、アドバイザリー・グループとして関わっていただきました。さまざまな立場から、「世界健康デー 2025」のテーマに即した熱いコメントをいただきました。
氏名 | 所属 | 役職 |
---|---|---|
遠藤 弘良 | 聖路加国際大学 | 名誉教授 |
岡部 信彦 | 川崎市健康安全研究所 | 参与 |
喜多 悦子 | 公益財団法人 笹川保健財団 | 会長 |
遠藤 弘良 - 聖路加国際大学 名誉教授
世界健康デーのテーマによせて
21世紀に入りCOVID19を始めとする新興再興感染症の流行、がん・糖尿病等の生活習慣病の増加、自然災害や紛争による健康被害の増加等、新たな健康問題に注目が集まっています。一方、WHOが創設されて以来、その基本的な事業であるMCH(Maternal and Child Health)と呼ばれるプログラムへの関心がややもすると薄れがちになっていました。
世界の政情不安の増加や地球環境の悪化により、人々の不安が増す中、今年の世界健康デーのテーマとして選ばれた「Healthy beginnings, hopeful futures」により、母親と赤ちゃんの健康は、健康な家族と地域社会の基盤であり、私達を明るい未来に導いてくれるものであることを再認識したいと思います。
岡部 信彦 - 川崎市健康安全研究所 参与
世界健康デー 2025 ご挨拶
2024年9・10月、ガザ地区でポリオワクチンの一斉投与のために一時休戦が実現、64万人が対象となった。2025年3月の停戦期間中にも60万人を対象に緊急投与が行われた。「子は最後の宝、異例のワクチン休戦」と、一見美談かのような新聞報道も見られた。もちろんワクチン投与のための休戦は良いことであり、その苦労調整は大変なことであったろうと思う。しかし、本来はそんな休戦などしないで済み、すべての子どもたちが日常の中で健やかに育つことができるようにすべきである。
COVID-19パンデミックの影響を受け、世界各地での予防接種率が低下し、ジフテリア・百日咳などが増加している。ヨーロッパでは2024年に13万人の麻疹患者が発生し、米国ニューメキシコ州では死亡者も出ている。
“Healthy beginnings, hopeful future” 一歩一歩、日常生活の中で、健やかなはじまりと希望ある未来を作り出していくことがますます重要となっている。
喜多 悦子 - 公益財団法人 笹川保健財団 会長
WHOの思い出
1990年代末、WHO本部の緊急人道援助部で勤務しました。当時急増していたComplex Humanitarian Emergency(複雑な人道の危機、国内紛争)他、自然災害支援が仕事でした。ほめられることでもありませんが、当時の世界の紛争地の90%は出張しました。アフリカ中央部のある国では、到着したものの飛行機から降りられないまま離陸したこともあります。
それから二十数年、ウクライナでもガザでも一段と対立者の憎しみそして戦いの残酷さが深まった事態が続いています。その昔の若き仲間が、それらの地で今も黙々と任務を果たしています。
科学は進歩しました。が、私たち・・人間は一体歴史から何を学んでいるのでしょうか?WHOの記事を見るたびに胸痛い想いに駆られています。