2020年5月の世界保健総会での決議に基づき実施された、中国武漢における国際共同調査チームによる報告書が2021年3月30日に公表されました。この調査報告書を巡る概要は次の通りです。
■調査のポイント
調査は起源に関する4つの仮説を検証することを目的としました。①ウイルスが最初の宿主(コウモリの可能性が高い)から別の中間宿主を経て、ヒトに感染したとする仮説。②最初の宿主動物からヒトに直接感染が起こったとする仮説。③中国が輸入した冷凍食品がウイルスに汚染されており、そこから感染が広がったとする仮説。④武漢にあるウイルス研究所(コロナウイルスの世界的権威)からウイルスが漏洩して広がったという仮説。
調査はオーストラリア、中国、デンマーク、ドイツ、日本、ケニア、オランダ、カタール、ロシア連邦、イギリス、アメリカ、ベトナムから集まった、34名の専門家からなる国際チームによって実施されました。
■仮説の可能性について報告書の結論
報告書では、4つの仮説について肯定的見解と否定的見解を記載したうえで、それぞれの可能性について以下の評価を行っています。
- 中間宿主動物を経てヒトに感染したとする仮説は「可能性が高い~非常に高い」。
- 最初の宿主動物からヒトに直接感染したとする仮説は「可能性がある~可能性が高い」。
- 冷凍食品から感染が広がったとする仮説は「可能性がある」。
- 研究所から漏れ出て広がったとする仮説は「極めて可能性は低い」。
更に2019年10月~11月頃に武漢地域でCOVID-19ウイルスが広がっていた可能性は「大いにあり得る」としています。
■WHOの見解
報告者を受け取ったテドロス事務局長は報告書の評価について次のように見解を表明しました。
「この報告書によって重要な点について私たちの理解が進んだ反面、この報告書は最終の着地点ではなく、さらなる調査研究を必要とする疑問が湧いてくる。私たちはこのウイルスの起源がどこなのか未だ突き止めてはいない」
その上で、全ての仮説の可能性が否定できない以上、確たる結論を得るために(動物市場や農家への聞き取りを含めた)さらなる調査が必要と述べました。また、調査の専門家チームが生データにアクセスするのに苦労したことに言及し、今後の共同調査研の継続と、よりタイムリーで幅広いデータを共有することを期待していると述べました。
(詳細は以下のWHOのウエブサイトをご覧ください)
調査報告書:WHO-convened global study of origins of SARS-CoV-2: China Part