近年、アフリカでは、マラリア治療薬の中心的化合物であるアルテミシニンに対する寄生虫の耐性が出現していることが報告され、また、一部の地域では併用される薬剤にも耐性がある可能性が指摘されています。
WHOは世界抗菌薬啓発週間において、この“抗マラリア薬耐性”という緊急問題に対応するための新戦略を発表しました。
戦略主執筆者で、WHO世界マラリア計画のコーディネーターであるパスカル ・ リングワルド博士は「抗マラリア薬耐性は深刻な懸念材料ですが、アルテミシニン系薬剤併用療法 (ACT) は、合併症のないP. falciparum (熱帯熱マラリア原虫) マラリアに対して利用できる最善の治療法」と指摘し、「医療従事者は、確定診断されたマラリアの治療に引き続きACTを使用する必要がある」と述べています。
この新戦略は、過去の世界計画から学んだ教訓を基に、抗菌薬耐性への対応など、既存の戦略を補完するもので、4 つの柱を通じてアフリカにおける抗マラリア薬耐性の脅威と影響を最小化することを目的としています。
- 抗マラリア薬の有効性と耐性に関するサーベイランスを強化する。
- 診断薬と治療薬の使用を最適化し、より適切な規制を行うことで、先制的措置による薬物耐性を制限する。
- 抗マラリア薬耐性寄生虫の蔓延を抑制し、耐性に対応する。
- 既存の手段をより良く活用し、抗マラリア薬耐性に対する新しい手段を開発するために、研究と革新を促進する。