2019年5月に名古屋で第120回日本医史学会が開催され、参加してきました。最近になって、毎年のように通い始めた学会です。新米の会員として、私自身も学会発表しながら、勉強しています。
アラビア医学では11世紀に「医学典範」(イブン・シーナー:ウズベキスタン出身の科学者)が発刊され、西洋医学にも大きな影響を与えました。モンゴル帝国の時代を経て「回回薬方」というイスラム式処方の本において漢語にも翻訳されていたそうです。一方、韓国医史学会の理事長講演では、数千年にわたる朝鮮半島の医学の発展の歴史を知ることができました。17世紀の大著「東医宝鑑」が漢字圏に大きなインパクトを与え、2009年にユネスコから世界記憶遺産に医学書として登録されたそうです。
私たちになじみ深いヒポクラテスから始まる西洋医学の歴史とは異なる大きな潮流があることに気づかされました。モンゴル帝国からルネッサンスに至るまでの時代には、中国、ペルシア、アラブ・イスラム系の科学や医学が興隆しており、相互に影響しあい深い関連をもっていました。東の中国・チベット・朝鮮の医学と西のペルシア・アラブの医学の交流、まさにシルクロードの時代からのグローバルヘルスの往還に関する学術的な知見の蓄積に大いに期待したいです。
2019年5月20日―28日まで、ジュネーブ(スイス)において第72回WHO総会(World Health Assembly)が開催されました。日本では、あらたな国際疾病分類(ICD-11)において「Gaming disorder(ゲーム障害)」が疾病として認定されたことが大きな話題になりました。この総会の様子は、全世界にライブ中継されていました。WHO総会でのさまざまな決定については、日本WHO協会のホームページのニュースなどでも報告していますので、ご笑覧いただけると幸いです。
理事長 中村安秀